企業の未来を担っていく新卒内定者の内定辞退は、企業の採用担当としてもなんとか避けたい事象です。しかし、いくら気を配っていても、時には思わぬことがキッカケで内定者の気持ちを冷めさせてしまうこともあります。今回は、企業の採用担当を務める方が実際に経験した失敗例をご紹介しますので、ご参考ください。
目次
ある企業では、内定者が学生の間は社内でアルバイトをすることができますが、アルバイトを希望する一人ひとりの性格やタイプおよび希望職種に合わせて、どの環境やメンバーの部署が理想的なのかを厳選していき、最もその内定者に適していると判断された部門を推薦していきます。
以前、関西の内定者Aさんからアルバイトの希望があった際に、関西支社の受け入れ先を検討する上で「○○部門ならぴったり合いそうだ」というイメージで配属を決めてしまったのですが、採用担当者のイメージは1年前に出張へ行った際にその部署のメンバーと会った時のものでした。
実際は、スタッフも数名異動しており、かつ業務量が部内で増加していたこともあって、以前とはまったく違った雰囲気の慌ただしいチーム状況だったのです。その後、アルバイトとして加わった内定者Aさんは、メンバーとの相性が悪く、その慌ただしいチーム状況が災いして仕事も丁寧に教えてもらえず、正社員になることが不安となり内定を辞退してしまいました。
ある内定者Bさんが、学業の都合により内定承諾をした時期が他の学生よりも遅く、10月の内定式に出席できませんでした。通常、内定式に出席をした内定者達には、式後に懇親会という場を用意し、現役スタッフとの交流も深められる場をセッティングしていました。また、二次会では内定者だけで交流をしながら絆を深められる場となるように企業側が会場を用意してサポートも行っていました。
そのため、来春4月に正式に入社するまでに企業側や内定者同士と繋がりをもちながら時間を過ごすことができ、新しい環境に対して不安の少ない状態で入社できるようにしていましたが、遅れて内定した内定者Bさんがその輪の中に入る機会を持つことができませんでした。
そのことをBさん本人も内定者SNSサイトの投稿情報から知り、入社に対して不安を抱いている状況でした。幸い、メンターだったスタッフがたまたま連絡を取った際にそのことに気付けましたが、気付くタイミングが遅ければ内定辞退にもつながる可能性があったでしょう。
この件に関しては、後日メンターのスタッフと数人の社員で、Bさんをランチに誘って企業側との接触機会を補い、「新しく同期を紹介する」という名目で近隣エリアの内定者を集め、会社主催のもと簡単な食事会を開くことで対象学生の不安を取り除き、状況を落ちつかせることができました。
これまでとは全く違った生活をスタートさせる新社会人にとって、4月入社以降のことは疑問や不安だらけという状態も珍しくないため、数多くの質問や疑問が内定者から問い合わせが入り、それに毎年のように答えている採用担当の方も多いと思います。よくある問い合わせだけではなく、個人的な質問やイレギュラーな内容には特に注意が必要です。
ある企業の採用担当者は、内定者Cさんから入社後の赴任手当に関して質問があった際に、特に確認をせずに「その場合なら手当ては支給されるから安心して。」と安易に答えてしまったケースがありました。しかし、入社後にCさんの場合は希望する赴任手当てが支給できないケースであることが発覚し、本人からの会社に対する信用を失った結果、Cさんが退職するという選択をしました。
その企業では、赴任手当は転居するための退去費用、異動先への交通費、入居のための初期費用をまかなうものであると定義しているため、支給額は数十万円となります。これを支給できないとしたら、学生の立場ですべて負担するのは困難ですよね。
後日判明したことですが、Cさん自身の家庭が裕福ではなかったため、転居を伴う就職先の場合は赴任手当があることも就職を決断する大きなポイントの一つになっていたようです。採用担当者が一先ず安心させたいがために答えた曖昧な返答が、今後長く勤めていくこと自体に不安を覚えさせてしまい退職するきっかけを生んでしまいました。
上記の例に関する共通点は、いずれも相手の立場に立ったときの配慮を欠いている事例であるということです。自分がその内定者の立場であれば、どのような言動をとることがベストなのか、そう考えるとトラブルや上記のような結末を避けることは難しくなかったはずです。新卒採用にパワーをかける企業のご担当者様は、内定者が入社するまでの期間は特に意識してご対応ください。
コラムPDF版はこちらからダウンロードできます↓
新卒採用の内定後フォローの失敗事例の体験談(418KB)