Column採用コラム

2019.06.24

内定者フォローレポート

カネカ騒動から考える退職マネジメントの話【No.153】

先日、化学メーカーの株式会社カネカが育休復帰直後の男性に配置転換を命じた問題が話題になりました。結果的に該当社員は退職し、その妻がツイッター上で不満を漏らしたところ波紋が広がり様々な議論が起きました。

そしてカネカは調査委員会を立ち上げて調査して、公式サイトで経緯を説明する騒動にまで発展してしまいましたが、一番批判を浴びている有休取得の拒否した件に関しては何もコメントしていないことがさらに批判を浴びる結果になってしまいました。

一連の騒動で気になったのはカネカという会社の問題というより退職した元社員と上司の問題である気がします。そして退職マネジメントがうまくいかなかったのではと私は考えています。退職マネジメントとは退職する際の会社側の対応を指します。

カネカ騒動について

カネカ公式サイトで発表したコメントにも「着任後に出張を認めるなど柔軟に対応しようと元社員の上司は考えていました」とありますが「考えていたが伝えていなかった」という不思議な現象が起きています。

また社長が全社員に送ったとされる文章にも「十分な意思疎通ができておらず、着任の仕方等、転勤の具体的な進め方について当該社員に誤解を生じさせたことは配慮不足であった」と書かれておりコミュニケーション不足であった点は会社側も認めている部分です。

そして「転勤に関しての種々の配慮について誤解したまま」とされていますが、誤解させたまま退職させてしまったというのが本当のところではないでしょうか。カネカ側は法的には問題ないことをアピールしていますが、退職した該当社員の会社への印象は悪いまま退職したことは容易に想像できます。

退職(内定辞退)する際の出来事は記憶に残る

極端な話ですが企業の印象というのは退職する際に大半が決まると言っても過言ではありません。なぜなら最後の出来事が一番印象に残るからです。社会人や学生に聞いた企業の評判も「退職を伝えて以降どのように対応されたか」について語る人が必ず一定数いますが、それほど印象に残りやすいと言えるでしょう。

ある人から「10年前にある会社を退職する際に定時終了後に会議室で部署の全員が集まってささやかな送別会をしてくれたことが嬉しかった。ただ部長だけが会議を理由に不参加だった。大事な会議かもしれないが3分間だけでも抜けられなかったのかと少し残念な気持ちになったことを今でも覚えています」というお話を聞いたことがあります。思わず言ってしまった「忙しい時期に辞めるなんて非常識」「君はうちの会社には合わなかったけど次の会社では頑張ってね」など文句や失礼な発言は印象に強く残ります。

逆に誠実な対応をすれば、それがそのまま企業のイメージになります。株式会社リクルートは退職マネジメントが上手いと言われており、退職した元社員が「辞めたけど良い会社だよ」と評判を広めてくれているのが就職・転職市場での人気の一因だと言われています。

どれだけ選考中のイメージが良くても選考辞退や内定辞退する際に冷たい対応や素っ気ない態度をとってしまえば学生は「あれ?」「ああ本当はこういう会社なのか…」と思ってしまうでしょう。学生に就職活動の話を聞いても悪いエピソードの話はスラスラと出てきますが、好印象よりも悪印象のほうが印象に残りやすいと言えるでしょう。

以前にカゴメの神対応について記事にしていますが、学生の場合、良いイメージをもたれていれば後輩を紹介してくれることも多いです。「私は辞退したけど良い会社だから会社説明会に参加したほうがいいよ」「第一志望が決まっていないなら話を聞きに行ってもいいと思う」と自然に口コミを広げてくれます。

最後まで誠実に対応することが必要

皆様は社員が退職する際または内定者が辞退した後の対応はどのようにしているでしょうか。淡々と対応して「はい、終わり」にしていませんでしょうか。

採用担当者の中には「辞退した学生を気にかけるより選考中の学生や内定者に時間をかけるのが効率的だし誠実ではないか」と考える人もいるでしょう。ただ私が伝えたいのは一言言えるかどうかの差が非常に大きいということです。

「退職は残念だけどこれまで一緒に働けてよかった」「いままで会社(部署)に貢献してくれてありがとう」「選考辞退は残念だけど当社に興味を持ってくれてありがとう」といった言葉を言えるかどうかだと思います。どんなに忙しいときでも心に余裕をもった一言を言えるようになりたいですね。

まとめ

退職が決まった瞬間から「部外者」として扱う人もいます(今回のカネカの一件もそのように対応している気がします)が部外者ではなく自社のファンとして考えるべきだと思います。これは内定者にも同じことが言えます。内定辞退が起きた時にどのような対応を取るかで、その後も自社のことを応援してくれるファンになるかどうかが決まります。採用担当者であれば『辞めても好きな会社』を目指してほしいと思います。

コラムPDF版はこちらからダウンロードできます↓
カネカ騒動から考える退職マネジメントの話(618KB)

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