最近、人材・採用市場でも浸透してきた「アルムナイ」という言葉。もともとは、卒業生や同窓生を意味する英単語ですが、過去に自社を退職したスタッフを再度迎え入れる出戻りのような意味で、ビジネスシーンでも使用されるワードになりました。
自治体でも中途退職した元職員を再雇用する「アルムナイ採用」が増えており、長野県や静岡県が2023年度に導入し、東京都も24年度から「都庁版アルムナイ採用制度」と銘打ち、4月から中途退職者の再採用を始めました。
今回は、一度退職したスタッフを再度雇用することにどのようなメリットがあるのか、実際にアルムナイ制度を取り入れることで生じるメリットをまとめました。
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一度その会社を辞めたということは何らかの退職理由が存在します。その理由こそが自社でこれ以上勤め続けることは難しいと当人に判断させた要因ですが、戻ってきたい意思がある時点で、その問題は当人の中で既に解消されていることになります。
また、新しく勤めた先で継続して仕事をすることができない理由を新たに感じ、その問題が自社で解決できると見込んで出戻りを希望しているはずなので、出戻りのタイミングでは以前よりも自社に強い帰属意識を持ってもらえることが期待できます。
転職はその人自身に大きな負荷がかかります。だからこそ特にネガティブな理由での転職を経験した人は「もう二の舞はごめんだ」と、次の勤め先で頑張ろうと強い気持ちを持つ方が多いでしょう。
そのような経験をしておきながら「やはり以前の会社に戻りたい」と思う心理的な状況は以前にも増して努力する意思が働いています。だからこそ、過去の自分自身よりも戻ってきたタイミングのほうが今後の定着・活躍に期待できると言えます。
また、企業の文化や理念の性質的な部分においても以前勤めていた感覚が残っている人が多いので、会社の雰囲気に馴染むのも早く、チームの一員としてすぐに活躍してくれることが期待できます。
口コミ体験談や評判も大きく採用や定着に影響します。そんな中で、退職者やアルムナイ制度に対して力を入れていることは世間から見て非常に好印象でしょう。ほかの会社に無い魅力や存在感を有する企業ということをアルムナイ制度で発信することもできます。
例えば、実際にアルムナイ制度を活用して再雇用となったスタッフのインタビューを自社のHP上でコラムとして掲載しSNSで拡散することも有効な広報活動になります。制度活用の実例をとおして「うちの会社ではアルムナイ制度を活用しています!」と積極的にアピールしていきましょう。
上記のブランディングにも紐づく内容ですが、出戻りを経験した当人の周囲では自社にとても良い印象が広まります。出戻りを経験したスタッフは、仕事・プライベート問わず、その経験を周囲の人に話す機会が誰しもあるでしょう。
一度退職をした人間が以前勤めていた企業に戻る事例はそれほど多くありません。戻りたいと思ったポイントは会社によって様々だと思いますが、そのポイントが魅力的に感じる人は世の中にたくさんいることが予想されます。
出戻り経験者の体験談そのものが知人や関係者の耳に届き、自社の魅力を感じてリファラル採用に繋がっていくこともメリットの一つです。出戻り経験者の実体験こそが、自社のリファラル採用における強みとなり、企業のブランド価値になるのです。
アルムナイ制度を運用するポイントは、少しでもスタッフが戻りやすいと感じる状況を作ってあげることです。候補者の心境として、多少なりとも出戻る企業に対して引け目をどこかで感じているケースが多いからです。
具体的な運用方法として一部選考を免除としたり、一定期間での出戻り(半年や1年未満)であれば選考を行わずに再入社できたり企業によって工夫がなされている事例が多数見られます。
会社によっては以前の雇用条件とまったく同様の内容で再雇用をする事例もあるほどです。それらの制度内容があるだけで出戻る側はとても安心でき、「戻りたい」という意思を表明しやすくなるのです。
年々、採用市場の競争激化が進む現状において注目される『アルムナイ』の魅力を解説させていただきました。新しく人を獲得するだけでなく、既存のスタッフや過去に関わりのあった自社の退職者に目を向けていただくと、意外なチャンスが存在しているかもしれません。今回のアルムナイ制度を採用や定着の観点からもご活用ください。