新卒採用の面接で「学生時代、一番頑張ったことはなんですか?」「学生時代、一番成功したことはなんですか?」という定番の質問があります。これらは成功体験を聞いている質問です。面接官は就活生の成功体験を聞くことで、就活生の行動力や性格をチェックしていますが、間違った評価をしやすい質問でもあります。新人の面接官が陥りがちな面接の落とし穴についてまとめました。
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「学生時代、一番頑張ったことはなんですか?」この質問は新卒採用のエントリーシートや選考面接において定番の質問です。問われないことはありませんので、就活生は事前によく準備しています。よく準備しているのはいいのですが、面接官にとっては学生の本質を見抜きづらくなってきています。
よくある回答例として「語学留学の経験」「自転車で日本一周旅行しました」「ヨーロッパ数か国をバックパッカーとして放浪しました」といったものです。これらの回答はインパクトがあるため思わず評価してしまいがちです。
ここで心を動かされる面接官は要注意。確かに日本一周やヨーロッパ放浪はすごいことですが、この時点で就活生を評価するのはミスマッチを起こす原因になりかねません。インパクトのある成功体験に騙されてはダメです。
では、面接官は成功体験の質問で何を見るべきなのでしょうか。それは、その成功体験に再現性のある成功方程式があるかどうかを見る必要があります。
再現性という言葉は非常に重要ですので、少し具体的に説明させていただきます。再現性とは、「いつ、どこで、誰がやっても、同じ手順で行えば同じ結果が得られる」というものです。化学は再現性がもっとも問われる学問の分野の一つです。
例えば二酸化マンガンに過酸化水素水を入れると酸素が発生しますよね。これは幼稚園児がやっても、誰がやっても、絶対に結果は変わりません。いつ、どこで、誰がやるかによって、結果が変化するようならば、それは科学とは言えません。
もう一度確認します。再現性とは「いつ、どこで、誰がやっても、同じ手順で行えば同じ結果が得られる」というものです。そして、面接における成功体験にも再現性のある成功方程式が求められるということです。
面接官は就活生が語る成功方程式が他の事例でも成功させることができるのか、という視点を持つべきです。例えば今回の自転車で日本一周という成功体験だけでは再現性のある成功方程式かどうかは判断できません。
どれだけ結果にインパクトがあったとしても、勢いだけでやってしまった成功体験には再現性のある成功方程式がないため、あまり意味がありません。逆に結果がついてきていない内容だったとしても、再現性のある成功方程式があれば、それは評価すべきことです。
極論ですが、再現性さえあれば失敗体験でも構わないと思います。つまり、面接官は「何をやったか」よりも、「どうやったのか」を重視する必要があります。今回の「自転車で日本一周旅行しました」を例にとれば、面接官は日本一周という結果よりも、どうやって日本一周したのかを重視すべき内容になります。
ここに二人の学生がいたとします。二人とも大学生時代に自転車で日本一周旅行したことをアピールしています。Aさんは思いついたらすぐ行動する派。周囲の友達や運や天候にも恵まれた結果、ノリと勢いだけで日本一周ができました。
一方、Bさんは旅行前に周到な準備をし、毎日の行動計画とスケジュールを決め、宿泊ホテルをすべて予約し、その土地の美味しい食堂を携帯で写真撮影していたとしましょう。
Aさんの行動に再現性はありません。一方、Bさんの行動には再現性があります。どちらの学生を採用したいですか?Bさんに仕事を任せたら、どんな環境変化にも対応でき、必ず周到な準備をしてくれるだろうと考えられます。
それでは面接官は具体的にどのような質問をすべきなのでしょうか。質問例をまとめました。
・きっかけとゴール設定
「なぜそれをしようと思ったのですか」
「目標はなんだったのですか」
・チャレンジ
「まず何から始めましたか」
・継続
「どんな努力を継続しましたか」
・挫折
「つらく挫けそうになったことはありますか」
「挫けそうになったとき、どう乗り越えましたか」
・協力
「周囲から協力してもらった部分はありますか」
「周囲から協力してもらうためにしたことはなんですか」
・突破
「目標達成のために、差別化をしましたか」
「目標達成のために、強化したポイントはなんですか」
・成功
「成功した瞬間のエピソードはありますか」
「成功した瞬間の気持ちを教えてもらえますか」
・成長
「その経験によって、学んだことはありますか」
「その経験を通じて、成長を感じた部分はありますか」
・その他
「その経験によって、周囲に影響を与えたりしましたか」
「その経験によって、その後の考えや行動に変化した部分はありますか」
「学生時代、一番頑張ったことはなんですか?」という質問で見抜くべきポイントをまとめました。ただし、学生がうまく話せなかったとしても、学生に再現性がないとは限りません。実体験を忘れている可能性もありますし、緊張して話がまとまらなくなってしまったかもしれません。
面接官をされる方には学生をリラックスさせてあげて、学生の魅力を引き出してあげる努力をしてほしいと思います。それを心がけていれば、いい採用がきっと実現できることでしょう。
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面接官が陥りがちな採用面接の落とし穴(604KB)