母集団形成とは企業のファンを増やすことで「この会社で働きたい」という人を増やすことです。採用活動を通じて企業の価値を上げることにより優秀な人材でなおかつ企業のファンである人を採用して、内定辞退やミスマッチ、離職率の低下を図ることを目的として行います。
近年、重要視されている理由として大学生の人数が限られている一方で、企業側の採用意欲が高まって求人数が増えているため、人材の獲得競争が激しさを増しているからです。
マイナビ企業調査では全業界で前年より厳しかった理由に母集団の確保が挙げられており、応募学生数・ES提出学生数・説明会参加学生数・1次面接受験学生数において約半数の企業が減少傾向にあると答えています。
特に知名度の低い企業には死活問題。時期や状況にもよりますが会社説明会にまったく参加者がいない企業も珍しくありません。企業はいかに自社にマッチした人材を効率的に集め、求める人物像に自社の情報を届けるかが新卒採用を成功させる大きなポイントになっています。
新卒採用の基本である母集団形成ですが、その手法は様々です。母集団形成にはどのような手法があるのか、最新の事例からメリット・デメリットを比較しながら母集団形成についてまとめました。
また、スマホ世代の就活生はLINEなどSNSの普及で、メールを見ない・電話を使わなくなっています。さらに普段使いのSNSは友人や家族とのプライベートなコミュニケーションであり、企業からの連絡ツールとしては避けたいと願っています。スマホ世代の就活生と長期間に渡り伝える、繋がる新たな方法を紹介します。
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これまではナビ媒体が母集団確保の主流でしたが、大学生の特徴や思考が多様化し、企業のニーズも細分化した結果、様々な方法やサービスが生まれています。採用予算や人材要件に合わせて最適な母集団確保の方法を見つけましょう。
リクナビ・マイナビ・キャリタスが主要媒体です。もっともメジャーな母集団形成方法になり、過半数の就活生が登録するため多くの募集企業が利用しています。数十万円~からの掲載料金を支払い、企業情報を登録し、自社の説明会に誘致するのが基本的な流れです。
メリットは多くの就活生にリーチできるのが強みです。デメリットは大手企業と比較されるため知名度の低い企業や、事業内容が地味な企業は埋もれやすい傾向にあります。必要に応じてオプション広告を利用し、露出を増やす必要があるかもしれません。
大量採用に向いており使い方が簡単な点も魅力ですが、学生からのエントリーを待つだけの受動的(受け身)な採用活動になりがちで、エントリーが少ない場合の対策も限られています。うまくいけば採用コストをおさえることができますが、採用ができなくても求人広告費が発生するため無駄になる可能性もあります。
業種・職種・特定の学生層に特化した就活サイトも多数あります。広告・マスコミ業界に特化した「マスナビ」、エンジニアに特化した「エンジニア就活」、体育会に特化した「アスリートナビ」、外資系に特化した「外資就活ドットコム」、ベンチャー企業に特化した「パッションナビ」が存在します。
母集団形成に必要不可欠なのが自社採用ホームページです。様々な方法と合わせて準備される補助的な役割が多いですが、応募動機の形成にも繋がる重要な役割です。合同説明会や就活サイトで自社に興味をもってくれた学生が、「どんな事業内容なのか」「どんな社風なのか」と具体的に企業研究する際にアクセスします。デザイン性だけでなく、就活生にとって知りたい情報がしっかりホームページに掲載されていることが重要です。
メリットは就活サイトや説明会では伝えきれない情報を伝えることができる点です。募集要項だけでなく、先輩社員の情報や、入社後のキャリアプラン、福利厚生など様々な情報を言葉と写真、または動画で伝えましょう。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した採用活動はソーシャルリクルーティングと呼ばれ、代表的なSNSとしてTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeが挙げられます。新卒採用アカウントを取得し、自社の採用情報やニュースを配信し、ユーザー(学生)と直接つながることができるのが特徴です。無料で利用できるのがメリットですが、運用負担が大きいとの声もあり、多忙な時期になると定期的な情報発信が続かず、更新が止まる企業も多いです。
またSNS広告として利用する企業もいます。学生の登録者も多いTwitterやFacebookに新卒採用の広告をだし、潜在層への認知度拡大を狙う企業もいます。Twitter広告はリスティング広告と同様に表示されるだけでは費用は発生せず、返信やクリック数に応じて課金されるエンゲージメント課金です。
最近ではYouTubeの利用が活発化しています。採用を目的とした動画広告や、公式チャンネルを開設し、採用ホームページのコンテンツの一つとして動画で会社の雰囲気や仕事内容を伝える企業も増えています。動画広告では動画の視聴前に流せる動画広告(インストリーム広告)は伝えられる情報が豊富なのが魅力ですが、動画制作費はそれなりの費用が発生します。
合同説明会とは、たくさんの企業が一堂に会して会社説明会を開催するイベントです。会場は大小様々ですが、国内最大級になると数万人が来場するイベントもあります。短時間で多くの就活生に知ってもらえ、触れ合えるメリットがあります。
各地域の主要都市でも大小様々な会場で開催されており、小規模なイベントや就活セミナーと題したイベントもあります。参加する際は会社紹介の映像やノベルティグッズを準備したり、会社案内パンフレットを準備したりしましょう。
学内セミナーとは、各大学内で開催される合同企業説明会です。主に就職課(キャリアセンター・就職支援センター)が主催し、就職活動の初期の学生が業界研究や情報収集を目的に参加します。
学内で開催されるため平日でも多くの学生が参加してくれるのが特徴で、企業側の担当者も大学OB・OGが担当し、気軽に質問する形式が一般的です。大学3年の秋頃から開催され、志望業界が決まっていない学生にアピールできるため、印象に残りやすいのがメリットです。
人材紹介会社の中には新卒学生を紹介してくれる企業もいます。完全成功報酬のため、初期費用もかからず何名紹介されても採用しない限り費用は発生しないのが特徴です。エージェントが選考以外の業務を代行してくれ、書類選考など一次選考の役割も担ってくれます。
エージェントは文系や理系といった属性といった基本的な要望だけでなく、特定スキルをもった学生が欲しい、海外のグローバル人材が欲しいといった要望にも対応してくれます。
「あと一人だけ採用したい」など少人数の採用や、目新卒採用に社内スタッフが追いついていない場合、急な欠員募集が発生した場合に利用する企業が多いです。エージェント側も厳選した人材を紹介するため、紹介される人材は多くないと思ったほうがいいでしょう。
インターンシップとは、主に大学三年生を対象に就業体験をしてもらう制度です。夏休みや冬休みの期間を利用し、一日から数日間の期間で実施されます。ナビサイトやインターンシップ専門の求人情報サイトで募集し、必要に応じて面接をし、開催日という流れです。
実際の現場での仕事体験やロールプレイング形式の仕事体験、シミュレーション体験、企画立案や課題解決型のグループワークなど様々な内容があります。本選考に有利になる内定直結型や長期実践型インターンシップもあります。
ダイレクトリクルーティングとは企業自らが学生を探し、説明会や選考の案内を送る手法です。OfferBox(オファーボックス)、iroots(アイルーツ)、JOBRASS(ジョブラス)等の逆求人型就活サイト(就活スカウトサイト)で企業側が学生に直接アプローチ(スカウト)する方法になります。学生側の登録者も増えており一般的になってきました。
メリットは自社の採用ターゲットに絞った質の高い採用活動ができる点です。学生の価値観やパーソナルな情報も確認してオファーを送れるため、選考過程でのミスマッチを減らせることができます。デメリットは企業自らが時間をかけて自社に合った学生を探さなければいけないため、大量採用するには人事部の負担が大きいと言えます。(採用予算に余裕があれば、外注(アウトソーシング)も選択肢の一つです。)
リクルーター制度とは、自社の社員が就活生に直接コンタクトをとる制度です。目的や役割は各社で違い、大学の教授に依頼して優秀な学生を紹介してもらったり、若手社員が大学の後輩にコンタクトをとったり、説明会に参加した学生の中から連絡をしたりと様々です。人材の発掘だけでなく、企業理解の促進や志望度の向上もリクルーターの役割としている企業もいます。
他社に先駆けて優秀な人材とコミュニケーションを図ることができるだけでなく、人事部が対応できない一人一人に対してリクルーターを通じて深い企業理解をサポートできるのがメリットです。デメリットは現場の社員にとって負担が大きい点です。通常業務に加えて採用という時間外労働や休日出勤などの仕事も増えてしまうため、会社全体の理解やリクルーターへの配慮が必要になってきます。
リファラル採用とは、社員に友人・知人を紹介してもらう採用手法です。別名リファラルリクルーティングとも呼ばれ、中途採用やアルバイト・パート採用でもおこなわれており、縁故採用(コネ採用)と違うのは血縁者ではない点です。
新卒採用においては若手社員や内定者から部活動やサークルの後輩を紹介してもらうことを指します。母集団形成には不向きながら、会社のカルチャーを理解した人間からの紹介であるため、ミスマッチは起こりづらい特徴があります。
無料で始められるのもメリットですが、自社のことを「紹介してもいい」と思わせる魅力的な会社であることが最低条件となります。従業員側の紹介する心理ハードルも低くなるため、インターンシップから依頼することをおススメします。
複雑化した新卒採用において一つの方法だけで完結できるほど母集団形成は簡単ではありません。母集団形成にはお金がかかるタイプ(広告型)と、手間がかかるタイプ(運用型)の二つが存在しますが、楽で簡単な方法は一つもないと思ってください。
事前準備が必要だったり、運用負担が大きい施策だったり様々ですが、「楽をしよう」とは思わないことから意識改革をしましょう。間違えなければきっと苦労した分だけ多くの魅力的な学生と出会えることになります。
関連記事:中小企業必見!苦労して集めた母集団を選考面接へつなげるポイント
様々な方法で集めた母集団形成を効率的に促すことも考えなければいけません。学生にとって就職活動の時期は多くの会社を知る機会があるということは、一社一社の印象が薄くなってしまい、目移りしてしまいやすいです。
また企業側の課題として、人事部が採用サイトに現場の社員の顔写真をお願いしても「誰でもアクセスできるサイトで名前や顔を出したくない」「名前や写真が悪用されないか心配」と断られるケースが非常に多いです。
そうした悩みを解決させるためには就活フォローにも活用できるSNSアプリ「Chaku2 NEXT(ちゃくちゃくネクスト)」がおススメです。招待制のため、企業と招待した学生しか見ることができないため、第三者に悪用される心配は全くありません。
関連記事:アプリdeインターンシップ”によるリファラルリクルーティングとは
新卒採用では地域・業種に関わらず母集団確保が年々難しくなってきており、楽観視して新卒採用をスタートすると、途中からではリカバリーできない可能性もあります。母集団形成の方法は多角化していますので、どの方法が最適なのか慎重に見極め、選考スケジュールを逆算して戦略的に母集団形成するようにしましょう。