私は前職がシステム会社のSEでした。6年前に採用コンサルに転職してきました。大小さまざまな企業の採用担当者の方とお会いしている中で、地方の採用マーケットは長年の常識が固定されていて、誰もそのことについて指摘しないことに不思議な思いでいました。
そんなある時、出張中に訪れたことのある人気の焼き肉店から火を出し、数人の客が煙に巻かれて亡くなったニュースをTVで見ました。
避難してきた客へのインタビューでは、「店内は満席状態で、奥の厨房から黒煙が立ち込めてきても、周りのお客さんが相変わらず肉を焼いていたので、悲鳴が聞こえてはじめて火事だと気づきました。何処へ逃げたらよいかわからなく、ただただ必死でした。」とのコメントだったと記憶しています。
このインタビューを聞いてハッと気づきました。今の採用マーケットは、まさに満席の焼き肉屋の客ではないか。何か事件が起こらない限り、旧態依然のまま3月スタートで合説イベントが始まってからの選考が当たり前だと考えている、採用担当者が多いのではないか。これは、大手ナビサイトや自治体の関係者、さらに大学のキャリアセンターなど、全ての採用マーケットに言えるのではないか。
何か起きない限り、この常識は変えようがない。もし何かが起きた時、焼き肉店で煙に巻かれて亡くなった客のように、犠牲者が出るのではないか。それも地方の中小企業に被害が偏るのではないかとの懸念でした。
この3月から蔓延した新型コロナウイルスが、まさに「何か」に該当する予感です。
第3波の新型コロナウイルスで東京・大阪・名古屋など大都市圏で、大規模な合同企業説明会(略:合説)が中止になっています。リクナビは12月末まで中止と正式発表しています。マイナビは人数制限したうえで、開催するとのことですが、コロナウイルスによる医療崩壊が叫ばれている折、開催は流動的ではないでしょうか。
また、当社のスタッフが全国の大学キャリアセンターに電話アンケートしましたところ、学生が県をまたいでの移動は禁止で、合説イベントへの参加も自粛するようにしている大学が複数ありました。
大学にとって最重要の入学試験と重なるこの時期、大学キャンパス内でクラスターが発生することを最も恐れています。
これまで全国各地で、大手の就活ナビ会社や地方自治体、採用支援会社が競って開催してきた合説イベントの開催は相次いで中止になる可能性が高まっています。
地方の中小企業にとって合説イベントは新卒採用の大事な手段でした。採用担当者は合説会場で、訪問する展示ブースに迷っている学生へアプローチすることで、「偶然の出会い」のチャンスが多くありました。
しかし、合説イベントが中止になれば、「偶然の出会い」は消滅してしまい、何か他を探さなければなりません。
そもそも、知名度のある企業はサマーインターンシップを実施するようになり、合説イベントに参加する重要性が下がり、参加を控える傾向にありました。知名度や人気企業の参加自粛に比例して、就活生も合説イベントへの参加が数年前に比べ半減しています。
地方の中小企業にとって新卒採用を今後どうすべきか、大手就活ナビ会社や自治体、採用支援会社は合説イベントに代わる、DX時代に即したサービス提案を1日も早く行うべき時と思います。
Zoomを使った、オンライン説明会の開催が多くなりましたが、企画が拙速で果たして中小企業にとって学生との「偶然の出会い」になるかといえば疑問です。読者の方も同意見が多いと思います。
私は、2022卒の学生にとって偶然の出会いの場を提供できるサービスを日々考えています。
読者の皆さんで、「偶然の出会い」を提供できるサービスに関心のある方は本庄孝司までメールください。