外国人材採用の専門家をゲストとしてお迎えするインタビュー企画「笑顔と信頼で世界をつなぐ」。今回のゲストは、中日福祉人財協同組合の下平様です。「外国人材フォロー」で取り組んでおられることについて、魅力深堀りインタビューをさせて頂き、「外国人材フォローの在り方」について学ばせて頂きます。
・1つ目は、組合の特徴について。
・2つ目は、外国人材受入の方針について。
・3つ目は、外国人材受入の苦労や注意点について。
・4つ目は、外国人材の定着に向け、挑戦されていることについて。
・最後に、外国人材採用について、アドバイスを頂きます。
このインタビューをご覧になる皆様にとって、「外国人材採用が、より身近に感じた!」「外国人技能実習生が、日本でイキイキと働ける、笑顔の職場とは何か?考えるきっかけになった!」そんな気持ちになれる方が、一人でも増えると嬉しく思います。
目次
先ずは【組合の特徴】について、詳しく伺います。
-Q1.【組合の特徴】介護の技能実習生受入れを始めたのはいつからですか?
外国人技能実習生の受け入れを始めたのは、2018年からです。5年間で中国から12名以上の実習生を紹介させて頂きました。コロナ禍で日本への入国が制限されていたため、介護施設への配属ができず苦労しました。
-Q2.【組合の特徴】現在、貴組合では、介護の技能実習生が、何名、日本で活躍されていますか?
介護の技能実習生は全て中国の方で、今現在5名います。また、技能実習期間を終えてから特定技能に移行した特定技能生は6名います。また、在留資格「介護」を取得している方も1名いて、2023年4月から介護福祉士として日本で働いています。受け入れ介護施設数は 2施設です。
-Q3.【組合の特徴】貴組合と、契約されておられる送出機関について教えてください。
送り出し機関については、これまでは、中国とベトナムの2か国が中心でしたが、今はインドネシアとミャンマーとも追加で契約しています。
ミャンマーについては、今、空前の日本ブームになっており、日本語学校がすごい林立し、日本を目指す若者が増えています。また、インドネシアについては、人口が約2.7億人で“ネクストベトナム”と言われています。特定技能生を希望する受入企業の方からは、最近、ベトナムよりインドネシアのオーダーが多いです。
-Q4.【組合の特徴】貴組合のどこに、地方の介護施設のみなさんは魅力を感じておられると思いますか?
私自身が介護福祉施設の運営もしていることから、「介護について理解があるので安心。そして、優秀な中国人材が多いという印象を受けたのでお願いします。」という介護施設が多いです。
中国の技能実習生が、受入企業の皆さまから人気な点は「漢字が読める・書ける」「向上心が高い」の2点です。介護の現場では、ものを書くことが多いのですが、介護記録を書くのが一番早く日本語を覚えられます。また、漢字であれば、日本語を読めば大体理解できるので、言葉の壁では中国が一番低いです。
中国の技能実習生は、3年の実習が終了後は中国に帰国する者がほとんどですが、中国は、これから高齢化していくため、いわゆる「技能移転」を実現できます。日本で学んだ介護技術を、中国に帰国後も母国の介護施設で活かし、管理者にもなれるので、日本にいる間しっかりと介護技術を学んでくれます。介護施設さんも、このように向上心が高い彼ら彼女らの将来を応援し、一生懸命に教えてくれてます。
-Q5.【組合の特徴】介護福祉施設の運営もされていることで何かメリットはありますか?
色々なタイプの介護施設を見れる点がメリットです。外国人材を受入れしてくれる介護施設さんと関わることで、各介護施設さんのやり方や運営の方法を勉強できます。人材の活用方法や、シフトの組み方も全然違うので、非常に勉強になります。そして介護施設の職員さんとは知り合いになれますので、介護に関しての相談相手も増えますから、大変ありがたいです。
その他にも、先日、介護施設と障がい者施設の両方を運営されている組合さんと話す機会がありました。そこで気が付いたのは、介護と同じで、障がい者施設の方でも人材を欲しがっている状況だったことです。このため、今後は介護施設だけではなく障がい者施設のほうにも、外国人技能実習生の受入れを展開していく予定です。
次は【外国人材受入の方針】について、詳しく伺います。
-Q1.【外国人材受入の方針】介護の技能実習生に将来どのような道を歩んでほしいと思いますか?
中国の実習生については、技能実習事業の本来の趣旨どおり、日本で学んだ知識を母国へ持って帰ってもらい、介護の発展に努めてもらうことが一番の理想形です。とはいえ、地方の介護施設では、人材不足が顕著になってきていますので、中国以外の国出身の実習生については、可能であれば技能実習1号、2号の3年間の実習が終わった後も、特定技能1号、さらにはその先の「介護」の在留資格で長期定着してくれると嬉しいです。
そのためには、技能実習期間中は介護技能だけではなく、日本語をしっかりと身につけてもらうことが大切です。なぜかというと、技能実習から特定技能に移った1年目に実務者研修があり、さらに、その先の介護福祉士の試験では日本語が身についていないと合格できないからです。
介護福祉士になれば、日本人と同等の手当が出て、給料も一気にアップします。さらに「介護」の在留資格も取得できるので、母国から家族を呼べるようになります。
-Q2.【外国人材受入の方針】貴組合の取り組みとして大切にされていることはありますか?
外国人技能実習生が、介護施設に配属された後も継続して、日本語教育を実施しています。介護施設では、外国人技能実習生であっても、最終的に1人立ちしないと意味がありません。実習生一人に日本人の介護職員がずっとサポートするというのは、介護施設さんにとって大きな負担ですので、介護に必要な日本語がある程度できるレベルまで、平日はZOOMで、休みの日は対面のマンツーマンで、日本語教育の先生をつけています。日本語能力があまり高くない子であっても、1ヶ月ぐらい日本語教育の特別授業を実施すると、配属後半年くらいには独り立ちできるようになります。
その他にも、中国残留孤児向けの日本語教室をZOOMでも開催しているのですが、より高い日本語能力を身に着けたい意欲の高い実習生は参加しています。
-Q3.【外国人材受入の方針】もし絶対に失敗しない保証があるなら、今のお仕事でやってみたいことはありますか?
入国後講習、実務者研修の機関を自ら運営したいです。入国後講習とは、外国人技能実習生の日本語能力や、日本社会に対する理解を高めることを目的として実施する講習です。そこでの学習は、実習生にとって日本の生活に順応していく上で、非常に重要です。
もう一つは、特定技能を持つ人たちが実務者研修を受けられる機関を設立し、彼らが介護福祉士として自立するまでの全過程をサポートしたいです。介護福祉士の国家試験に臨むまでの「ロールモデル」になる存在を、実習生に魅せてあげれば、彼らのモチベーションにも繋がります。私が理想とする未来は、彼らが来日後も、一貫して当校で学び続けることで、最終的に自分の介護施設や事業所を、日本で持てるようになるまでリーダーシップを発揮できる人材に育つことです。そうなれば、例えば、今から50年後の遠い未来、現在のベトナムも高齢化が進みますから、日本で育った人材がベトナムで活躍するのも夢ではありません。
次は【外国人材受入の苦労・注意点】について、詳しく伺います。
-Q1.【外国人材受入の苦労・注意点】実習生の生活面で、何か苦労や注意されていることはありますか?
コロナ禍のときには鬱になってしまうくらいホームシックで悩んでいる子がいて、その時はメンタルケアのサポートで苦労しました。コロナ禍の時、実習生の母国で入国制限となり、実習生が帰国できなくなったのです。いま現在でも、ホームシックになる子はいますが、受入介護施設さんは、職業柄、傾聴のプロですので実習生の話を聴いて寄り添ってくれます。まず、みんな、ホームシックには一度なるので、その時に、どれだけ寄り添ってあげるかが大切です。
-Q2.【外国人材受入の苦労・注意点】実習生が失踪してしまうことはあるのでしょうか?
弊組合では、技能実習生、特定技能も含めて、失踪を1回も出したことはありません。他の監理団体さんから聞いた話では、給料が原因で失踪することが多いようです。具体的には、低賃金で労働時間がとても長かった、つまりサービス残業をさせられたということです。あとは、実習生同士の喧嘩など職場内でのいじめも原因としてあるようです。
このようなサービス残業や、職場内のいじめについては、適正な監理団体であれば、定期監査で気づくはずです。実習生、受入企業さんの双方に、必ず面談しするので、実習生さんと受入企業さんの言い分が違ければ、すぐ気付くはずです。しかし、なぜ?このようなことが起きるのか言うと、本来は監査で受入企業に指摘しなければいけませんが、実習生の受入を継続してほしいばかりに、監理団体が目をつぶっているのではないのか?と、個人的には思います。
次は、外国人材の定着に向け挑戦されていることについて伺います。
-Q1.【外国人材定着の挑戦】外国人材の定着に向け、貴組合で実施されておられることはありますか?
代表的な事例としては「1on1の個別面談」「SNSを活用した相談体制」「体や心のケア」「懇親会」の4つです。
-Q2.【外国人材定着の挑戦】「1on1の個別面談」について詳しく教えてください。
外国人技能実習生と受入介護施設の日本人職員、そして、私ども監理団体の3者が信頼し合い、双方が安心して働ける環境を構築することが、実習生が長期間定着する支援になると思います。そのため、実習生本人が「この介護施設で働いていて楽しいな」と思ってもらえるような支援を心がけています。今では、実習生と友達のように話せますし、実習生が一人で悩みを抱え込まないように、1on1の個別面談の時間も定期的に設けています。
-Q3.【外国人材定着の挑戦】「SNSを活用した相談体制」について詳しく教えてください。
実習生は昼間働いていますから何か悩み事を相談に来るのは夜です。このため、弊組合では、いつどこにいても実習生からの相談に対応できるように、SNSでの相談体制を構築しています。SNSでは、実習生から夜中に送られてくる 相談メッセージを、弊組合の職員全員が共有できるようになっているので、翌日には直ぐに対応できます。実習生は、細かな相談内容をメッセ―ジしてくることはありませんが、何か困ったことがあれば「寂しいです。」や「悩んでいます。」など簡単なメッセージで良いから送ってね。と声がけしています。実習生に、SNSが安心安全の場であることを認識してもらうことが大切だと考えています。
また、SNSのメリットとしては、実習生の顔と名前が一致できる点です。弊組合では、職員全員はもちろんのこと、理事も見れるような仕組みにしています。職員が 1 人で対応できる人数は、私の感覚ですと、 20 名くらいであれば丁寧に対応できます。それを超えてくると丁寧な対応が難しくなります。SNSを活用すれば、いつどこにいても、技能実習生の顔と名前を一致させることができますから、例えば、100名の実習生がいるとしたら、1グループ20名として、各グループに専属の職員をつけ、5グループに分けて実習生をフォローする体制が良いと思います。
-Q4.【外国人材定着の挑戦】「体や心のケア」とは、どのような取組ですか?詳しく教えてください。
介護の実習生の中には「腰が痛い」ことを我慢している子が多いです。介護施設さんに配属されたばかりの実習生が、一番最初に直面する最大の課題ですね。
特にベトナムの子は体格が小さいので、介護の現場で、体重が重い利用者の方の移乗作業に苦労しています。とは言え「腰に負担がかかるような仕事から外して欲しい」とは、自分から介護施設さんに言いづらく、私の方に「腰が痛いことを、介護施設さんにばれないように仕事をしていました。」と、直接相談が寄せられることがあります。
そんな時は、私の方から介護施設さんに「実習生が、腰を痛めているようなので、その仕事から外してあげてください。」と代わりに言ってあげることはあります。しかし、ずっと、その腰に負担のかかる仕事をしないわけにはいかないですので、実習生には「腰が痛い」と感じたら、直ぐに介護施設さんに相談するように助言しています。介護施設さんは、介助の仕方で、腰を痛めない方法や、腰が痛くならないような体の動かし方を知っています。このため、実習生には「腰を痛めない介助の仕方を、日本人職員から教えてもらって、動きを覚えていかないといけないよ。」って伝えています。
心のケアという点では、特に東南アジアの子を受け入れる場合に注意していることがあります。それは、みんなの前で怒らないということです。要は恥をかかされたという感じで、ものすごく嫌がるんです。怒られることが嫌ではなくて、みんなの前で怒らるのは嫌だという感じです。𠮟り方にも注意が必要です。
-Q5.【外国人材定着の挑戦】「懇親会」について事例を教えてください。
実習生同士が会うような交流ではありませんが、弊組合の懇親会に実習生を招待することがあります。具体的には、受入介護施設さんと、実習生と、私ども監理団体の職員を集めた懇親会です。最低でも、1受入介護施設さんに対し、年に1回は開催しています。実習生が日常会話ができるようになり、仕事にも慣れてきてたタイミングで開催します。私自身は、実習生とコミュニケーションしていますが、実習生が、仕事や生活をしていて普段会えないような、例えば、受入介護施設の理事長と仲良くなれる機会として、そのような場を設けています。そこで仲良くなれば、何か問題があったときでも、連絡取り合えるというのは大切だと思っています。
最後に【外国人材採用のアドバイス】について、詳しく伺います。
-Q1.【外国人材採用のアドバイス】「日本語がつうじるか?」「日本の習慣に馴染むか?」など、外国人材採用に不安があるという話を聞きますが、いかがでしょうか?
日本語を最初から完璧に話せる実習生はいません。日本語の完璧さを期待されても、それは正直に「無理です。」と事前に伝えていますが
介護の仕事ができないわけではありません。外国人採用の不安を払しょくするには、実際彼らが一生懸命働いているところを見てもらうしかないかなと思います。外国人採用を検討されている企業様には、是非、一度、外国人技能実習生を受入れをされている介護施設に見学されることをおすすめします。
コロナ禍中は、ご存知の通り、介護施設には部外者の立ち入りを制限していました。しかし、今は見学できる機会を設けていますので、働いている実習生に、直接会って話しをされるのが一番だと思います。
後は、できれば面接は現地で行ってほしいと思います。ZOOMでは全く伝わらないので、どんな子が来るのか、彼らが人生をかけて来日する姿を、自分の目で見てほしいですね。先日、ベトナムへ面接に行ってきましたが、やる気のある子たちが沢山集まっており、そういう姿を見ると本当に元気をもらえますし、彼らの夢を応援しようという気持ちになります。
-Q2.【外国人材採用のアドバイス】外国人技能実習生に対するネガティブな報道がありますが、実際はいかがでしょうか?
私どもの監理団体では、これまで、実習生や特定技能についても失踪を出したことはありません。来日している大勢の実習生がいる中で、失踪者が一人でも何か事件を起こすと、大きなニュースとなり、実習生自体にネガティブなイメージを持たれるのは悲しいです。
基本的に失踪については、職場内の人間関係が良好であれば発生しないと思います。後は、実習生本人にも、失踪することが、どんなに怖いことなのか?リスクがあることか?入国前講習でしっかりと理解して頂く必要があります。この点を、理解していないと、どれだけ人間関係が良くても給料の高い方に移ってしまいます。
-Q3.【外国人材採用のアドバイス】最後に「これは言っとかないといけない!」という一言、お願いします。
私が、この仕事で一番楽しいのは、実習生が育っていく姿を見ることです。日本語が上手になったとか、そういうところ一つとっても、見るたびに嬉しいです。人生をかけて来日して、自分の目標や、夢の実現に向けて頑張っている彼らから「また会いに来てください。」「下平さんのおかげで、うまく行きました。」と言われると本当に嬉しいですし、彼らを心から応援しようという気持ちになります。そして、受入介護施設の日本人職員の皆様からも「彼らと一緒に仕事ができてよかった。」「職場に笑顔が溢れて明るくなった。」と言って頂けることが、私のやりがいになっています。
まだ、外国人採用に不安があり、実習生の受入れに勇気を持てない方も少なくないと思います。私は、そのような介護施設様にこそ、是非一度、我々の介護施設で活躍している実習生の姿を見学に来ていただきたいです。
組合名 | 中日福祉人財協同組合(CFJ) |
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