2017年7月に富山県の機械メーカー不二越の本間博夫会長の発言が話題になりました。この発言は採用にも深く関係してくる内容だけに、ただの不適切発言として片づけてしまっていい内容ではないように思えます。今回の発言の真意を考えながら、採用に置き換えて問題点を考えてみました。
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「富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、不二越。これは駄目です。変わらない。」「富山で生まれて地方の大学へ行った人でも極力採りません。閉鎖された考え方が非常に強いからです」
確かに不適切な発言ですが、なぜこのような発言をするまでになったのでしょうか。富山県民は閉鎖的だと感じる何かがあったのかと気になっていましたが、先日ある記事でこの疑問に関係するエピソードが書かれていました。どうやら不二越が中国市場を開拓するために出向を命じた社員達が、かなり嫌がった人が多かったようです。
会長の立場からすると、海外拠点もある機械メーカーである以上は海外転勤や海外出向の可能性を納得したうえで入社しているだろうと思っているでしょう。それなのに「富山を出たくない」と公然と嫌がる姿勢を出す社員達に閉鎖的だと思ったのかもしれません。
しかし、社員からすると「地元で働きたくて入社したのに、まさか中国に転勤させられるなんて…」「中国に転勤なんて聞いていない!」と思ったのではないでしょうか。富山県の「持ち家率第1位」という県民性も影響している可能性があります。
本当に社員の方々は閉鎖的な考え方なのでしょうか。様々なメディアでは富山県という地域性にスポットが当てられていますが、採用のミスマッチ問題についても考えていきたいと思います。
そもそも今回の発言ですが、本来は人事部や採用担当者に言うべき内容ですよね。「もっとチャレンジ精神旺盛な学生が欲しい」「海外転勤をアピールポイントにしよう!」「5年後を考えて中国語の得意な学生や海外留学経験のある人材を積極的に採用したい」海外転勤があれば、外国語スキルの高い人材や海外志向の強い人材を採用しなければいけません。
想像になってしまいますが、新卒採用の際に海外転勤を示唆していないまま入社しているのであればミスマッチだと言えますし、海外転勤の可能性を知らないまま入社した社員の方々は少し可哀想かなと感じます。
自分が同じ立場になったら拒否するかもしれません(もちろん社員の方も時代の変化や会社の状況に柔軟に合わせなければいけませんが)。
採用担当者は敏感に志望理由の背景も推測することが大切です。エントリーしてくれた母集団の傾向として「富山県で働きたい」という志望理由は、逆に言うと「富山県以外で働きたくない」と考える事も出来ます。地元愛が強いといえば聞こえはいいですが、閉鎖的な性格でないか見極める必要があります。
あくまで転勤は可能性である以上は不合格にする必要はないと思いますが、入社前(内定者フォロー)の段階で、海外拠点の状況を踏まえて将来的に転勤の可能性があることを説明することが一番理想的ではないでしょうか。入社後に「思っていたのと違った」とならないためにも、内定者フォローの期間にある程度の心構えをさせてあげるのが大切だと思います。
推測ではありますが今回の発言から、様々なタイプの人材を採用する必要性、将来を見据えた採用計画など様々な背景が考えられました。しかし、新卒採用市場では母集団形成が難しい状況ですので、多様化した採用ニーズ・必須能力・求める人物像(人材要件)に応えるのは容易なことではありません。
「採用のミスマッチをなくす」と言うのは簡単ですが、現在の市場環境や不確定要素を考えると実行するのは非常に難しい問題だと言えます。だからこそ準備期間・選考期間・内定者フォロー全てに時間をかけて対応していくことが今の採用担当者に求められている役割ではないでしょうか。
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不二越会長の発言から考える内定者フォローの重要性(145KB)