景気が良くなれば新入社員の大量一括採用が増えますが、一方で大量離職も伴っていると言われています。なぜこんなにも大量離職が発生してしまうのでしょうか。その原因と問題点を探ってみました。
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どの業界でも景気や業績が回復すれば業務拡大のために、大量採用をおこなうのは一般的な方法です。しかし、企業規模に対して、かなり採用人数が多い会社もあります。例えば従業員300名規模の会社で採用予定人数100名だと、社員数に占める採用人数が約25%になります。およそ新入社員が2名に対して、先輩社員は1人でOJTをおこなわなければいけないと考えられます。
大量採用を実施する理由は、その会社の離職率が高いためだと言われています。少し極端ですが大量採用と大量離職はセットで考えられており、実際に入社3年以内に3割以上の新卒が辞めてしまう会社は多くあります。
大量離職の理由は様々ありますが、大きな要素としてミスマッチが挙げられています。例えば募集枠が大きい営業職は入れ替わりが激しい職種であり、新規開拓と呼ばれる飛び込み営業や電話営業は結果が求められる仕事です。目標達成できずに自分には向いていなかったと退職する人、高いノルマに疲れてしまう人も多いです。
しかし、大量離職の原因はミスマッチだけの問題でしょうか。ミスマッチが原因ならどこでミスマッチが発生しているのでしょうか。どういう募集が大量離職に繋がるのか求人広告のベンチャー企業で数年間勤務したことがあるAさんから興味深い話を聞けました。
Aさんが入社することになった求人広告会社は、就活サイトのキャッチコピーや職種名は「課題解決型の広告営業(ソリューションの提案営業)」として募集していたそうです。仕事内容についても「クライアントの採用課題を解決」するのが仕事として、社会貢献の高い仕事をアピールしていました。
ノルマといった営業の厳しさは極力伝えず、「広告制作も担当」「将来的にナショナルクライアントも担当」といった学生ウケのいい言葉を使用していました。上場しているベンチャー企業という魅力も重なって、Aさんの同期は約180人いたそうです。
Aさんはスタートアップ企業でのインターンシップの経験から厳しさを理解して入社したそうですが、周囲の同期に志望理由を聞いたところ、「広告に携わりたい」を入社理由に挙げている人が多かったそうです。企業研究の足りない人は電通や博報堂のような大手広告代理店のような仕事だと勘違いしたまま入社していた同期もいたそうです。
実際には電話を1日100件かけて、ようやく1件アポがとれるのが営業の世界。アポが獲得できなければ毎日怒られる日々だったそうで、現実とのギャップは相当激しかったと想像がつきます。毎月辞める同期がおり、最終的に1年で3割の同期が辞めてしまったそうです。
内定者との認識のズレを放置していると、入社後に大量離職に繋がってしまうことがわかりました。今回の事例では就活生側の企業研究不足の課題もありますが、しっかり情報提供できていない企業側にも改善できる余地があると言えます。
採用活動では認識のズレ(ミスマッチ)を作らないことが叫ばれていますが、企業研究が不十分になりがちな新卒採用では修正作業も大切です。素晴らしい会社はインターンシップや選考前から仕事の仕組みや相性など情報公開し、ミスマッチを防ぐ努力をしていますが、学生側の認識がどこか甘くなってしまうことは往々にして起こりえます。
選考前・選考中・選考後と修正できるタイミングは多いですが、落ち着いて対応できる内定者フォローの期間に企業側がしっかり情報発信し、企業研究や相性のマッチングを改めてサポートするのが、これからの人事に求められている仕事ではないでしょうか。
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あるベンチャー企業で新卒の大量離職が起きている原因(149KB)