リクルーターを導入したけれど上手く機能せず、採用に結びつかない。リクルーターの質にバラツキがある。リクルーターの学生受けが良くない。しかし、社外のリクルーター研修をするほど予算に余裕がない。実はリクルーターを社内で研修することができます。
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リクルーターの役割は各社で少し違います。大学教授に優秀な学生を推薦してもらったり、後輩に連絡をとったりし、アプローチ方法は色々ありますが、最終的な目的は自社にエントリーしてもらうことです。
主に理系採用や金融・保険業界で活用されているリクルーター制度ですが、採用難により通常採用でも広がってきています。様々な接触方法がありますが、今回はOB・OGが出身大学のゼミ室や研究室へ出向き、企業側から積極的にアプローチすることをリクルーターの役割にしています。
リクルーターの具体的な仕事内容は、会社公式の勧誘要因として2月から5月の3ヶ月程度は週1日、ゼミや研究の開始前や終わりにゼミ室や研究室に訪問します。
その際に「就職活動で悩んでいることがあれば相談にのるので、少しお話ししてみませんか?」と声を掛けます。担当してもらう大学のすべてのゼミ室を回ったら一旦そこで終了です。ゼミ室や研究室の規模にもよりますが、2~3人は紹介してもらえます。
本来の業務への負担がかかることから勧誘人数は決してノルマにせず、あくまで週1日は担当大学に行ってもらい学生とお話ししてもらうことを優先するのが望ましいです。
OB・OGの中にはコミュニケーションを取るのが苦手な技術職や内勤の人もいると思うので、ゼミ室や研究室の教授への紹介をOB・OGが行いリクルーター活動は営業に代わってもらうとよいでしょう。
募集職種の仕事内容や必要な知識などが知りたいと学生に要望されたら、コミュニケーションを取るのが上手な社員を送り込むか、コミュニケーション下手なOB・OGを希望された時のみ、事前にロープレをしてから学生と会うようにします。
本記事は社員数300名以下の企業で母集団形成を目的として、ターゲット校のOBまたはOGのリクルーターを母校に10~15名派遣して自社の紹介をすることを前提にリクルーターの研修方法をご紹介します。
リクルーターに選ばれると通常業務に加えて、慣れない仕事が加わるためにモチベーションが下がる人もいます。また、リクルーターに選ばれた人に対して「人に業務を押しつけて学生とおしゃべりするだけの仕事なんて、気楽でいいな」という不満が出てくることもあるでしょう。
業務が増えることに対しての不満や社内の人からの不満をフォローすることも、リクルーターをまとめる採用担当の仕事です。
【リクルーターが働きやすい環境を整備する】
1)全社員にリクルーターについて周知をして、社内で協力し合うように呼びかける。後輩からOB訪問を依頼された際は個人で対応せず、リクルーターが対応する旨を全員に周知徹底させる。
2)リクルーターの活動範囲をゼミが終わった後や学生と会う時のみなど限定する。また、すぐに回答できない質問をされたときやアドバイスに困った時は無理に回答せず、改めて連絡することを約束させる。「試験前に来ないで欲しい」「自社アピールばかりで相談にのってくれない」などのクレームを受けた時などは必ず採用担当に報告をさせて、採用担当が対応することを約束し、責任はリクルーターをまとめる採用担当が負うことを明確にする。
3)リクルーターと採用担当で定期的に面談を行ない、1人で悩みを抱えていないかフォローを行なう。
4)リクルーターを派遣することを就職課・キャリアセンター、ゼミ室・研究室に承諾を得て学生を勧誘しやすくする。
【学生や大学からリクルーターへのクレームを減らす】
1)学生のスケジュールを考慮したリクルーター活動を行なう。
2)採用チームが公平な情報提供と採用活動を行なうことで、学生に不信感をもたれないようにする。
3)院生に学部生より早めにスケジュールを教えたり、面談と言いながら志望動機や自己PRを聞いて一次選考を行なうようなことをしない。
4)採用HPや求人広告にリクルーター活動はしない、と記載しながらリクルーターを派遣するようなことをしない。
5)ターゲットの学生を明確にして伝える。
6)遠方から工場見学や説明会に誘うときは多少でも学生に交通費を支給するようにする
7)リクルーター活動に慣れていない企業は、リクルーターを会社紹介やOB・OG訪問に利用して就職協定違反ぎりぎりのプレ選考を実施してリクルーターを面接官の代わりに使うような行為をさせない。
これらのことを行なうことでリクルーターに選ばれた社員は安心して働くことができます。なお、社員の中からリクルーターを選ぶ時には2年~5年目の社員を選ぶことが多いですが、学生の中にはもっと会社の組織的なことを知りたい人や入社から20年後ぐらいの社員像を知りたい人もいますので、ベテラン社員にも声をかけておくと良いでしょう。
また、学生に「こういう人になりたい」と思わせるためにも、今勢いのある社員や急成長している社員、クライアントに評判の良い社員、エース格の社員を選出すると良いでしょう。
※ターゲット校のOBやOGに該当するような社員がいない時には、他校のOBやOGでも構いません。
1)求人広告・採用HP・自社プロフィールを紹介できるようにする
学生に自社を知ってもらうために、会社案内や求人票、求人サイトを用いて説明すると思いますが、あまりにもたどたどしいと「この人で大丈夫かな?」「こういう社員ばかりいる会社はあまり行きたくないな」と思ってしまいます。自信を持って紹介できるように資料を読み込んで頭に入れておきましょう。
学生に自社の説明をするためには採用職種や採用人数だけではなく、男女比、年齢割合、有給取得率、産休・育休取得者数、募集職種の月平均の残業時間と休日出勤日数は就活生が気にするポイントです。曖昧な回答をさせないためにも事前にリクルーターにも各種データを共有しておきましょう。
また、説明をする時にリクナビやマイナビの就活サイトの内容と異なる説明をすると学生が混乱したり、不信感を持つ原因になるので求人広告の内容に沿ったスプリクトを作成して共有して、あとはリクルーターが説明しやすいようにアレンジしてもらうのも良いでしょう。
学生に興味を持ってもらうポイントとして、会社案内にそった説明の合間に社風や社長の人柄、商品開発中のエピソード、職種別採用であれば部内の雰囲気や上司の人柄を合間に紹介していくと学生に興味を持ってもらえます。
スクリプトをアレンジする際に、リクルーターが取り入れやすいエピソードを盛り込んでもらうようアドバイスしてください。
<エピソード例>
・社長は生粋の研究者で会議嫌いと社長室にいないことで有名。「社長決済が必要なら研究所へ行け」が社員の常識になっている。
・新入社員の時に技術部の社員だと思っていた人が社長でビックリした。
・部署には佐藤が5人いるので、佐藤姓の人を名前で呼んでいたら今では女性社員全員を名前で呼ぶようになった。
・お花見、バーベキュー、花火大会、紅葉狩り、慰安旅行、フットサル大会、野球大会などのイベントが多い。強制参加ではないが、参加すると後で1日振り替え休暇を取れる。
2)新卒時の就職活動を振り返ってもらう
リクルーターとして学生と向き合うには就職活動を行なっている学生の立場に立って物事が考えられないと、学生との距離を縮めることができません。自分が就職活動をしていた時のことを思い出してもらいましょう。
<最低限思い出してもらうこと>
・業界や職種、企業をどのように選んだのか
・自社をどうやって見つけたのか
・企業選びの基準はどんなポイントだったのか
・選考中は何を考えていたのか
・就職活動で苦戦したこと
・他に考えていた会社
・いつ頃までに入社する会社を決めたのか
・最終的に自社へ決めたポイント
3)入社動機を振り返ってもらう
なぜ自社に入社しようと思ったのかを思い出してもらいましょう。
「WHAT:何が理由で入社を決めたのか?」
「WHY:なぜ自社に入ろうと思ったのか?」
この2通りで答えられるようにしておくと、学生の質問に合わせて答えられるようになります。
4)自己紹介をしてもらう
学生に心を開いてもらうには、まず自分から心を開かないといけません。初対面で会うときには第一印象が重要です。あまりにも営業的だと営業になれていない学生はとまどいます。しかし、礼儀を欠いた馴れ馴れしいのも嫌がられます。フランクな雰囲気を持ちながらもビジネスマナーを守った自己紹介とはどんなものか、クライアント受けの良い営業社員に実践を交えて講義してもらいましょう。
5)今の仕事内容とやりがい、困難を乗り越えたエピソードを語ってもらう
自分の仕事を部外者にわかりやすく説明するのは意外と難しいものです。今までの仕事内容を整理したうえで、専門用語・社内用語を使用せずに仕事内容の説明、やりがいを感じるエピソード、困難を乗り越えたエピソードを書き出してもらいましょう。
ポイントは学生が聞いてイメージしやすいか?を問いかけながら書き出すことです。話を聞いてイメージがわきにくいと「難しそう。自分には無理」と興味を失ってしまいます。話だけでは説明が難しいのであれば、持ち出し可能な資料を使って話をする方法を考えてスプリクトを作成するようにアドバイスをしてください。
社外秘の資料を持ち出されると問題になるので、営業が使用している資材やプレゼン資料、会社説明会で使用している資料などを用意しておくと良いでしょう。
6)学生時代と今の自分の違い(成長した部分)を語ってもらう
学生から「自分がこの会社に入って成長したと思うところはありますか?」という質問をよく受けます。また、キャリアアップしたい学生も多いので「自社に入ってから成長したところ」や「どういうステップを踏んで成長したのか」を整理して書き出してもらいましょう。
7)今の夢や目標を語ってもらう
一般的なサラリーマンのイメージだと目の前の仕事に追われて、夢や目標を持っていないイメージを持ちます。しかし、「自社の社員は夢や目標を持って仕事に臨んでいる」ということをアピールするために、リクルーターに今の夢や目標を書き出してもらいましょう。
8)会社員だけでなく、就活のアドバイザーになってもらう
学生と仲良くなるには、就職活動の先輩として相談に乗ることが1番です。自社のことばかりでなく、相手の立場を考えてアドバイスを送るようにしましょう。
<アドバイスポイント>
・質問の真意を確かめる
リクルーター「うちの部署は月に1回飲み会をやって、部内のコミュニケーションを取ってるんだよ」
学生「飲み会は強制参加なんですか」
リクルーター「どうして気になるの?」
学生「飲み会は嫌いではないんですが、お酒が飲めないので居酒屋のような場所は苦手なんです。」
リクルーター「お酒が飲めない人は飲み会が苦手だよね。でも、うちの部署にもお酒が飲めない人がいるし、お酒が飲めない人でも楽しめるホテルバイキングや創作料理のお店なんかを選ぶようにしているから安心して」
このように、学生は的確な質問ができないことがあるので、質問の真意を確かめると学生が何を確かめたいのかを知ることができます。
・否定をしない
学生「現時点でエントリーを考えているのが御社とXX社、○○社の3社です」
リクルーター「XX社は人間関係が悪いから受けない方がいいよ」
学生「会社説明会を聞いた限りではそのように感じませんでしたし、仕事に魅力を感じるので受けます」
リクルーター「いや、後悔すると思うな」
このように頭ごなしに否定をすると学生は意固地になりますし、学生の人生は学生のものです。また、他社を悪く言うとSNSに「リクルーターがXX社の悪口を言った」と書き込まれたり内定辞退につながりますので絶対に辞めましょう。
・リクルーターは聞き役に徹して「自分の時は・・・」と意見を押しつけたりしない。
学生は自分の考えを理論的に話せないこともあるので、話をさえぎらず最後までしっかり聞き、必要に応じてメモを取る。
9)全体的の流れをシュミレーションしたスプリクトを作成
1)から8)までの項目を、実際に学生に会うときの流れをシュミレーションしたスプリクトを作成します。台本のようにきっちりしたものではなく、本人がわかればメモ書き程度でも構いません。
スクリプトを作成しておくと初めて活動する時やあがり症の人は心強いですし、困った時に読み返すことができます。時間的余裕があれば、第三者が説明もれや間違いがないかチェックすると良いでしょう。
10)ロープレをするとさらに効果的
時間的に難しいと思いますがロープレができるとリクルーターも自信を持つことが出来ます。1番良いのは内定者や新入社員を相手にロープレしてもらうことですが、難しいと思うのでスクリプトのチェックも兼ねてリクルーター同士でロープレしてみましょう。
新卒採用はすでに学生が企業を選ぶ時代に入ってきています。どれだけ学生に良い印象を与えられるかが重要になる一方で、選考を行なわなければいけない企業に対して「不公平は嫌い」「学部によって選考を変えるのは汚い」と純粋な気持ちをぶつけてくる学生もいます。できるだけ公平性を保ちながらも採りたい人材を優先的に押さえられるよう、リクルーター研修に力を入れてください。
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新卒採用リクルーターを育成できる社内研修ポイント10項目(612KB)