就職活動において自己分析という言葉は、「学生にとって重要」だと世間一般には思われがちですが、実は「企業にとって大事」なものでもあります。今回は、東京都の人気サービス企業に勤めている新卒採用担当者の経験も踏まえながら、その価値や重要性に関して解説をしていきます。
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一般的に、学生の個人的な情報に関しては、プライバシーの侵害に当たる可能性もあるため、面接選考時などには差し支えのない範囲でしか伺わないケースがほとんど、しかもそこには企業としての信頼感を損ねるリスクまでも孕んでいます。
しかしながら、その学生の本質的な価値観や考え方を知るためにも、学生自身が育ってきたバックグラウンドや、できる限りたくさんの情報まで知ることはできないかと、方法を模索している企業の採用担当者も多いのではないでしょうか。私がお話を聞いた企業も、まさにそのような考え方でした。
そんな際に活用できるのが「自己分析」です。例えば、選考ではなくリクルーター面談などの機会を用意し、学生とやや気さくに話せる場を準備します。そこで、「しっかりと就職活動を成功させるためにも、正確でぶれない自己分析を行い、就職活動の軸を定めるところからスタートしよう。」と提案してみてください。
企業のメリットを追い求めず、最初は学生のメリットになる時間を提供するスタンスを、必ず持つように心がけてください。そこからは、学生の話を聞きつつ、的確なポイントで質問を投げかけて深堀りしていきます。下記の例を参考にしながら、イメージをお持ちください。
(例)
厳しい練習を経て、●●という結果を残すことができた。
Q:なぜ厳しい練習を耐えることができたのか。→A:負けず嫌いだったから。
Q:なぜ負けず嫌いなのか、誰に影響を受けてそうなったのか。→A:母
Q:母の何が影響を受けるほど魅力的なのか。→・・・・
上記のように、「何で●●を出来たのか」や「誰の影響で●●が出来たのか」など、その学生の本質的な要素をたくさん引き出していきます。そうすることで、学生自身も自分がどのような環境で育ってきて、何を大事にこれまで人生を過ごしてきたのか、正しく振り返る時間をすごすことが出来ます。自然と学生のためにやっていることではあっても、企業にとっても知りたい情報が聞きやすくなります。
学生のパーソナルな部分を知ることが出来た次のステップとして、その学生が持つパーソナリティを会社の志望動機と結びつけていくことができます。
企業を受ける志望動機は学生によって考え方が様々ですが、どの企業にも当てはめられる平凡な動機や理由(事業内容、福利厚生の充実、社風)では、結果的に数ある一社の中から、企業は選ばれることを待つしかない状況に陥る可能性があります。しかし、学生のパーソナリティを志望動機に結びつけることが出来れば、その企業は唯一無二の存在となります。
(例)これまで12年間ダンスに打ち込んできた人生は宝物だった。「共にひとつの目標に向かって頑張ってきた仲間の存在」があったから続けられた。「親やお世話になった人たちへの感謝の気持ちを表現する」ためならいくらでも頑張れた。これからも、そんな学生時代と同じような、もしくはそれ以上に打ち込めることをしたい。
上記のような学生がいた場合、前述の「共にひとつの目標に向かって頑張ってきた仲間の存在」や「親やお世話になった人たちへの感謝の気持ちを表現する」というポイントが学生にとっては、企業を選ぶ非常に重要なポイントになるはずです。したがって、その会社でしか成し遂げられないものに学生の志望動機を結び付けられれば、非常に強い動機付けが学生に対して出来ます。
ただし、企業側が持つ魅力をしっかりと学生にアピールできるようなプレゼン内容を、しっかりと作りこんでおくことが重要になります。相手を腹落ちさせることが出来るポイントを押さえた会話を意識しておきましょう。
人生の生き方や価値観など、その人物の根底にある想いや本質は簡単に変わるものではありません。それらを十分に理解するために企業も手伝ったほうがいいと考える企業も増えてきています。毎年2万人がエントリーする人気企業でもこうした努力をしているのは、優秀な人材獲得だけが目的ではなく、入社後のミスマッチ軽減にもつながる取り組みだからですね。
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新卒採用担当が就活生の自己分析をサポートする二つの理由(278KB)