海外展開をしている、もしくはこれから海外への事業拡大を計画している企業が求めるグローバル人材。グローバル人材の採用機会は今後も増えることが見込まれます。グローバル人材の採用選考において、必要となる判断基準のポイントをご紹介します。
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語学というのは、ある程度まで異文化との接触なしに習得できるスキルです。日本だけをとっても、英語力を上げるためのスクールやサービス、参考書も充実しています。しかし、そこで学ぶもののほとんどは「語学」であり、グローバルなステージで仕事を進めるために必要なスキルの一部でしかありません。
候補者が日本人でも、外国人でも、自己の文化や習慣が持つコミュニケーションスタイルの枠を外す能力を備えているかも重要になります。高いレベルの資格、留学の経験、会話も流暢という人材はいます。英語を問題なく使えることを最優先の条件とし、コミュニケーション能力の低い人材を採用しないよう注意が必要です。
たとえば、ヒアリング情報が重要となるような業務で、必要な情報をキャッチできなかったり、伝えることばかりが増えて、結局要点が伝えられなかったりというケースもあります。語学力の高さが、職場の中でも、対クライアントでもアダとなってしまう人もいるのです。
逆に、多少の難航はあったとしても、語学力の不足をうまくコミュニケーションに活かす人もいます。結果的に、周りの協力を得ながら業務を進めていき、良好な結果につなげているのです。
グローバルな環境とは、「異質な人、モノ、コトに触れること」と言い換えられるほど、自分の世界との違いを経験します。各職場レベルでも、国を跨ぐレベルの仕事でも異文化理解力は欠かせません。
これは、新卒、中途、海外と関わっていく日本人、日本で就職する外国人でも、同様に必須の要素です。グローバル人材を求めるとき、どのようにして候補者の異文化理解力を見極めればいいのでしょうか。
候補者が、異文化での違いの存在を認識しているか、どのように受け止めているかを探ることも有効です。さらに突っ込めば、自分の常識と異なる価値観に動じない慣れ感を持っているどうかもポイントとなるでしょう。
「日本のことをどう捉えているか」を問うのもひとつの方法だと思います。視点はそれぞれですが、異文化に触れているほど、日本のことや日本人である自分を客観視する経験値は高いものです。これが異文化を理解するスタート地点という意味でも問いかける価値があるでしょう。
日本の新卒者からグローバル人材を発掘しようと思うとき、帰国子女や海外留学経験者を視野に入れる担当者の方も多いと思います。
グローバル人材のニーズの高まりから国内の大学の留学支援プログラムも増加傾向にあるようです。しかし、参加者の60%以上が一ヵ月未満の滞在という調査結果もあり、企業が期待するグローバル性を備えた学生の母体数は少ないのが現状。海外経験の乏しい候補者から、異文化理解力を測ろうとしても一般的なイメージの回答しか得られないこともあります。
ただ、グローバル人材に必須のものとして、グローバルな仕事がしたいというモチベーションが挙げられます。この意欲無しには、語学力や異文化理解力の向上も見込めませんし、自国だけよりタフになる仕事をこなしていくことは難しいでしょう。
視点を変えると、モチベーションの低い海外経験の豊富な人材よりも、グローバルな仕事で活躍したいという意欲を持っている人材のほうが、グッと伸びしろが大きいこともあります。どちらを優先するかは、企業の求める人物像(要件定義)に異なってきますが、心に留めておかれることを強くおすすめします。
そのような候補者の見極め段階では、次のような点に着目してみてください。
「相手を理解することの必要性を認識しているか」
「コミュニケーション上で理解しようとする姿勢があるか」
上記は、日本人に欠けやすい資質とも言われています。
「柔軟な思考や捉え方ができるか」
「寛容に受け入れることができるか」
できるだけ少ないストレスで、積極的に周りと協力し前に進んでいくための資質です。面接に限らず、選考プロセスでのやり取りに組み込んでみてはいかがでしょうか。
グローバル人材の採用は、学歴、海外経験、取得資格など目に見える結果だけを基準にするとリスクが高まります。候補者のコミュニケーション力、柔軟性、異文化理解力など人間的な資質も十分考慮することも欠かせないポイントです。