PCでの業務が増えた昨今、気がつけばチーム内の会話も減っており上司と部下で話すのは仕事の確認事項のみという会社が増えてきているようです。また、マネジメント職になってから正当に仕事の評価を付けたのに部下に「嫌われているから評価が低かった」と陰で言われたという経験を持つ人が多くいます。このような状況を変化させる方法の1つに1on1があります。本記事では初めてでも1on1を実施できる方法をご紹介します。
尚、本記事は
『ヤフーの1on1部下をやる気にさせるコミュニケーション技法』
本間 浩輔 著(2017年3月24日発行 ダイヤモンド社)
を参考にしております。
目次
1on1とはマネジメントとスタッフの1対1で話し合いを行い、スタッフ本人に気づきを促してスタッフのスキルアップを図ることを目的として実施します。
1on1で期待できるのはスタッフのスキルアップを図るだけではありません。他にもマネジメントとスタッフの信頼関係の構築、気づきを与えるマネジメント側のスキルアップ、部署やチーム内のコミュニケーション活性化が期待できます。
さらにマネジメントとスタッフの信頼関係が構築できれば、スタッフの最適な配置や業務の効率化、長時間労働の軽減、評価の時に生まれるスタッフの不満解消、定着率のアップにもつながります。
自社で抱えている課題を解決できそうな1on1をどうやって行うのか興味がありますよね。
ここでは、初めてでもできる1on1の実施方法をご紹介していきます。
1on1を実施する時には聞き役になるマネジメントに下記のスキルを身につけてもらい、スタッフの話をうまく聞き出せるようにしましょう。
【マネジメントに必要なスキル】
・質問力
・傾聴スキル
・ティーチング
・コーチング
・フィードバック
最低限このスキルを身につけたうえで、1on1対象者をよく観察をしてスタッフがどのような個性を持っているのかリサーチをしておきます。研修を行っても話す相手の個性や趣味などを知らないと雑談すらできませんので、スタッフのことをよく把握するように心がけてください。
1on1の1回目はマネジメントとスタッフの双方が「1on1で何を話そうか」「1on1で何を聞かれるのだろう」と不安になります。その不安を取り除くために1on1実施前にアンケートを実施して、1回目はアンケート結果の内容を確認するようにしましょう。
話の内容をメモに取るまたはPCへの入力をしていると手元に目が行ってしまいます。話す側は相手の視線が自分からそれてしまうと「本当に話を聞いているのか」と不安になります。
マネジメントは話を聞いていますよ、と態度で示すようにしましょう。
【マネジメントが1on1で実践すべき7つのポイント】
・体を話し手に向ける
・柔らかい表情と適度なあいづち、共感を忘れない
・話をせかさず、話し手のペースに合わせる
・スタッフの話を遮らない
・スタッフに考えて答えを出すように仕向けて答えを言わない
・自分の経験談を話さない
・1on1は秘密厳守ときちんと伝える
スタッフに寄り添うような姿勢を心がけてください。
時間が無いとすぐに本題に入りがちですが、天気の話でも休日の過ごし方でも良いので雑談から入り、お互いの緊張をほぐしてから本題に入りましょう。
スタッフが担当している業務について下記の3点を確認しましょう。
・今どの業務をしていてどのくらい進んでいるのか?
・業務をしながら何を考えているのか?
・困っていることはないか?
スタッフによっては論理的に話せない人や言葉につまる人もいるでしょう。特に他のスタッフが原因で困っている時は「こういう風に言うと悪口になるのではないか」と思う人もいます。
先にも述べましたが話を遮る、先に結論を言うといったことはせずにスタッフが話し終えるまで辛抱して聞いてください。また、概要をさらっと聞くのではなく具体的にどんな業務で何が大変なのか、その業務のどこで困っているのか聞き出せるようにしましょう。
業務の中で成功したことや失敗したことを聞き出しましょう。そして「なぜ成功したのか、そこから何を得たのか」または「なぜ失敗したのか、そこから何を得たのか」を聞き出してください。
「なぜ成功(または失敗)したのか」「そこから何を学んだのか」この2つのうちどちらかの質問に答えられないスタッフもいるでしょう。その時はスタッフ自身に考えさせてください。マネジメント側から意見を押しつける、または答えを言うと1on1の意味がありません。注意してください。
評価の時期に起こるのが「この時期にコレをしておけば良かったのに」とマネジメントに指摘をされてスタッフが「それなら早く言ってよ」と不満に感じるケースが多く見られます。
1on1の中で定期的に「目標を達成するには、今週はどう動けばいいだろうか」「何が足りないのだろう」とスタッフと目標の進捗確認行い、次どう動けばいいのかスタッフに考えてもらい実行してもらうことで評価査定時の不満を解消しましょう。
学んだことを活かさなければ学んだ意味がありません。この時、業務全体を把握しているマネジメントは「この業務に活かせるのでは?」と提案したくなると思いますが。ここはグッとこらえましょう。スタッフ自身で気がつかなければ「言われたからやるだけ」になってしまい、スタッフの成長に繋がりません。
スタッフが今後どんなことをしたいのか聞き出しましょう。スタッフがすぐに実現できそうな「こういう業務をしたい」と言ったら「いつ頃実現させようか」や「何か手伝えることがあったら言って」とスタッフの意見を尊重して承認してあげましょう。
また、興味のある業務や時間を忘れて取り組めること、勉強していること、キャリアプランやライフプランに伴う異動の希望をヒアリングしておき、スタッフのキャリアアップの手助けや人事異動に繋げられるようにして、スタッフのキャリアアップの後押しができるようにしておきます。
1on1の終わりには次回はいつやるのかアポイントを取りましょう。そのうえで5)~9)で答えが出なかったことや解決しなければいけない課題について宿題を出して次回は宿題の確認から話を始めましょう。
なお、急遽仕事で1on1を実施できなかった時は振替の日程を調整して、必ず実施するようにしましょう。1人でも1on1の実施が流れてしまうと「そこまで重要ではないんだ」とスタッフに認識され、モチベーションが下がってしまうので注意が必要です。
1on1の効果を最大限に発揮できるのは会社全体で実施することですが、難しい時は部署やチーム単位で行い、実績ができたら会社全体に広めて行きましょう。1on1で大切なことは継続することです。「気がついたら自然消滅していた」ということがないようにしましょう。
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コミュニケーション活性化とスキルアップができる1on1とは(455KB)