内定者研修(入社前研修)を実施している企業が増えていますが、一部では「内定者研修を実施する企業はブラック企業」という意見がありました。なぜそういった意見が生まれるのか原因を考えながら、内定者研修を推奨する理由と、ブラック企業と呼ばれないために気をつけてほしいポイントをまとめました。
目次
内定者研修(入社前研修)とは、企業が内定を出した入社予定者に対して行う社内研修のことを言います。内定者研修には大別して4タイプあります。
ビジネスマナーや資格関連などのインターネット学習型、テレアポなど実際の業務に従事してもらう実践型、工場見学などの体験型、内定者同士の交流を目的としたイベント型があります。タイプによって研修期間も最短1日から数か月と様々です。
企業側の目的として「社会人として必要最低限のマナーは入社前に理解してほしい」「入社意欲を維持してほしい」「学生から社会人に意識を変化してほしい」「内定者同士のコミュニケーションの活性化」等が挙げられます。企業の考え方も多種多様で、入社前の学習は一切不要と考える企業もいらっしゃいます。その中で当社が内定者研修を推奨する理由を次にまとめました。
「本来、研修は入社後におこなうのが正しい。学生時代の貴重な時間を使ってまで研修させるのはおかしい」とする人がいます。確かに内定者はまだ学生という身分ですので、学業を優先するのが第一です。また卒業までの短い期間を学生時代にしかできない経験を積んでほしいと思います。
一方で大卒者の入社3年後の離職率は約3割というデータがあります。これは新卒採用のミスマッチが原因の一つです。入社後に「仕事内容が想像していたのとは違った」「社風が合わなかった」「労働環境に不満があった」として早期に退職するのはお互いにとってマイナスにしかなりません。
この問題の解決に内定者研修は大いに役立ちます。事前に内定者研修を実施できれば、入社前に会社や仕事の理解度を深められ、就業イメージを掴むことができます。本当に自分には合っていない会社や仕事だと思えば内定辞退をし、就職活動をやり直すことができます。(ただし安易に内定辞退すべきではありません。)
法律的に注意しなければいけないポイントがあります。第一に強制(義務化)しないことです。内定者の段階はまだ従業員ではありません。中小企業で勘違いしてしまうケースが稀にありますが、内定承諾書がそのまま雇用契約書にはなりません。研修参加の強制には注意が必要です。
第二に不参加の人間にペナルティは科さないことです。金銭面以外にも「配属に違いが生まれる」といった発言もNG。不参加の内定者に不利益が生まれる状況は実質的に強制と判断される場合があります。
第三に雇用契約を結ぶことです。長期的な内定者研修(入社前研修)を実施する場合は、仕事(労働)をしてもらうケースがほとんどだと思います。労働をしてもらう前に雇用契約書(労働条件通知書)の取り交わしが必須です。入社するまではアルバイトとして雇用し、入社前に正社員として改めて雇用契約書を取り交わしましょう。
なお当たり前ですが地域別の最低賃金は必ず守ってください。一部の悪質なブラック企業はインターン生や内定者を安価な労働者と考える経営者がいますが、法律違反です。ただし、入社前の懇親会や本社見学などの研修であれば「労働」とは言えませんので、この場合の雇用契約書の取り交わしは必要ありません。
内定者研修の注意点と推奨する理由をまとめました。法律面以外にも学生からは「修士論文と重なって負担が大きい」「学業の妨げになる」といった意見も散見されますので、内定者に配慮することが大切です。内定者研修を実施するなら早めに内定者研修の課題やスケジュールの告知をしてあげましょう。
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内定者フォローレポート⑭内定者研修(入社前研修)を推奨する理由