政府も後押ししている複業(副業)ですが、本格的に乗り出している企業もまだまだ少ないでしょう。しかし、今後は採用難が本格的になってくるため複業(副業)採用に乗り出さないといけなくなるかもしれません。社員に複業をしてもいいか質問された、または複業採用をやらないのか問い合わせがあった人事担当者の方に、複業採用のメリット・デメリットをご紹介します。
目次
働き方改革や残業時間短縮を推進している政府が急に副業を推進し始めたのでしょうか。理由は2つあります。
・人材不足を補う
・このままだと若い人の年金が少なくなってしまう
これらの問題は政府が課題の先延ばしをしてきたために、いよいよ現場が混乱し始めて収集がつかなくなってきてしまいました。そのために、苦肉の策で副業を推進せざるを得なくなってしまったのです。一方で、働く側から本業の給与だけでは少ない、職種によっては副業を可能ではない企業は魅力ではない、という声が上がり副業禁止を解禁した企業もあります。
インターネットで検索をすると「複業」と「副業」の両方でヒットします。政府では「副業・兼業」という表現をしていますが、「副業」ではなく「複業」を用いている企業には理由があります。副業は本業があってのサブ的な副業を意味するが、複業は本業をいくつも持つことを意味しています。副業、複業、兼業の他にも企業によりさまざまな呼称をつけています。
この章ではすでに複業(副業)採用をおこなっている企業の事例をご紹介します。
【サイボウズ「複業採用」】
ソフトウェア開発会社のサイボウズ株式会社は、「100人いたら100通りの働き方」とのキャッチフレーズを掲げてワークスタイルや契約形態に関係なく、ビジョンに共感した仲間を増やすことを目的に「複業採用」を開始しました。
【LiB「メンバーシップオプション」】
転職サービスを運営する株式会社LiB[リブ]は、複業、時短勤務、リモートと多様な働き方が可能ですが、正社員としてジョインでき、待遇面でも正社員同様にストックオプションなどが受けられます。
【サイバーバス「助っ人採用(複業採用)」
インターネット広告代理店事業を展開している株式会社サイバー・バズは、全職種、就業形態選択可能になっています。エンジニア職からバックオフィスを含めてリモート可能で募集をおこなっています。
【ランサーズ「タレント社員制度」】
クラウドソーシング事業を展開しているランサーズ株式会社は、2017年6月から副業で働く人をタレント社員として募集しています。経験や専門スキル、人脈を可視化して採用をおこなっています。
【LIFE STYLE「シンクロキャリア(複業)採用」】
VRクリエーター教育事業を展開しているLIFE STYLE株式会社は、本業を複数持つシンクロキャリア(複業)採用を2017年7月から開始しています。LIFE STYLEのビジョンやミッションに共感する人を対象とした他の仕事を持っている人(フリーランス含む)を対象として採用をおこなっています。
【ライフネット生命「パラレルイノベーター採用」(複業新卒採用】
生命保険会社のライフネット生命は、複業を応援するために新卒であっても複業採用を可能にしました。ライフネットで働くのは週3日~4日でもOKになっています。
このように多くの企業で複業(副業)採用を実施しています。中には複業採用を実施しているサイボウズの社員が他社の複業採用に募集をしてきた例もあるようです。
副業採用を行なう大前提として会社の組織の柔軟性がないと難しい現実があります。柔軟性のある企業とは組織が安定しており、新しい制度を柔軟に受け入れられる受け皿が用意できる企業という意味です。複業採用を実施するには最低限下記の7項目を準備しなければなりません。
・人事制度の改正
・どのような人を採用するのか
・複業(副業)採用者の雇用形態や勤務形態
・採用基準
・複業(複業)社員をコントロールするマネージャ
・複業(複業)社員とコンタクトを取る人
・秘密保持契約書、雇用契約書、請求書などの準備
これらのことを、なんとなく決めて実施すると現場が混乱して、せっかく採用した複業社員が辞めてしまいます。また、現場の指揮命令者の仕事が増えてしまい「かえって自分でやった方が早いのでは?」と複業採用に疑問を感じる社員が増えるかも知れません。
複業採用を開始する前にシミュレーションをおこない、社員が納得したうえで実施に踏み切りましょう。一方で、有能なマネージャさえ確保できれば人事制度が未熟な少数精鋭のスタートアップ企業でも、複業社員の得意分野を活かして事業でも成功できるでしょう。
複業(複業)社員の採用が成功するかは採用方針と運営方法にあります。複業(複業)社員の雇用は上手くいけば人件費の削減に繋がります。しかし、整備しなければならないことが多くあります。採用に関しては、現場からのスキルや仕事内容のヒアリングをどれだけ念入りにできるのか、採用基準の設定が重要になるでしょう。
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2019年は複業(副業)採用本格化(390KB)