先日、慶應義塾大学からイギリスのケンブリッジ大学に留学した方が、日本で就職活動をした際の違和感について書かれたブログ記事が話題になりました。日本の採用担当者にとって学びの多いエントリーですので、ご紹介させていただきます。
海外と日本の就職活動の歴然とした差を実感。海外大博士から見た就職活動
https://hajime77.com/entry/phd-job-hunting/
海外においても最高位の学位である博士を取得しても、そのまま研究員になるのはごく一部だそうです。この部分は日本国内と同じですね。日本と大きく違うのはアメリカなど海外の英語圏で授与されている博士水準の学位Ph.D. (ドクター・オブ・フィロソフィー)の学生が年間350万円ぐらいの給料をもらっているケースもあるそうです。
筆者の就職活動は世界最大級のビジネス特化型SNS「LinkedIn(リンクトイン)」を通じておこなっており、そうすると企業のリクルーターやヘッドハンターから声がかかります。
日本の就職活動はリクナビやマイナビ等ナビサイトが中心ですが、海外ではリンクトインでの就職活動や転職活動は広く普及しています。日本で言うとリクナビ2019とリクナビNEXTが合体した役割だと言えばわかりやすいでしょうか。
目次
まずCVを提出しているにもかかわらず履歴書と職務経歴書を求められることに驚いたそうです。CVと呼ばれる英文履歴書(英文レジュメ)が日本の履歴書と同等の意味と役割を担っていますが、リクルーターから言われたのは
“Do you have your Rirekisho and Shokumu-keirekisho? English CV is not acceptable.” (リレキショとショクムケイレキショはお持ちですか?英語のCVは受け付けられません。)
だそうです。筆者からしたら履歴書を提出しているのに再度、履歴書を求められる理由がわからないといったことが書かれています。筆者がどのような企業、どのような職種(ポジション)に応募したかは明記されていませんが、たとえ日本人向けのポジションだとしても海外の大学出身者には臨機応変に対応するのが望ましいです。
著者の方はjob description(ジョブ・ディスクリプション)が曖昧であることにも驚いています。ジョブ・ディスクリプションとは職務記述書を意味し、簡単に言ってしまえば仕事内容です。ブログでは「そんな何をするのかわからない曖昧な仕事内容に応募できません」と内容が書かれています。
これは日本独自の新卒採用文化が関係しているように思えます。日本の一部の企業では職種別のエントリーが可能ですが、基本的に未経験採用が大半です。入社後に配属先が決定される会社もあり、仕事内容を詳しく書けないという事情を抱えている企業もあります。
また企業によってはジョブローテーションと呼ばれる部署移動が定期的におこなわれる会社もあります。他にも営業職なのにコンサルタント職で募集する企業もあり、しっかり企業研究をしないとミスマッチが起こりやすい環境とも言えるでしょう。
・履歴書、職務経歴書、SPI、TOEIC必須(英語CV不可)
・博士新卒の初任給は海外大学院生の奨学金や給料より低い
・人事部が面接をする違和感や企業側の上から目線
など様々な違和感について書かれています。この記事に対する反応でおおむね共感・賛同する方が多いものの「すべての企業がそうではない」「総合商社系は理解がある」「日系企業に就職する気ならTOEICくらいは受験しておいたほうがいい」「外国人でも日系企業に就職したいなら履歴書くらいは書いたほうがいい」といった意見もありました。中には「会社の規定でTOEICを受けなければいけなく、外国人の同期も戸惑っていた」なんて笑えないコメントもありました。
イギリスのケンブリッジ大学という超エリートコースを歩んできた筆者は、結果的に日本の企業風土・慣習に合わないと感じてしまい外資系コンサルティングファームに就職しました。著者は海外の大学で博士号を取得した人が外資系に就職するのは給与面で優れているのが理由ではなく、日本独自の文化や採用ルールに馴染めずグローバルスタンダードな価値観を持っている外資系しか選択肢がないためだと分析しています。
日本と海外の違いをまとめた体験談は少なかったので非常に面白かったです。海外と比較して日本の就職活動は特殊と言われてきていますが、具体的に海外のスタンダードな就職活動の方法や価値観が分かる良い記事でした。
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海外の大学出身者が体験した日本での就職活動の違和感(422KB)